ただ制服を着てるだけ 感想

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今更読んだ。

めちゃくちゃよかったので珍しく感想を書いていこうと思う。


この作品のあらすじを1行で書くとこうなる。

29歳のコンビニ店長・堂本が行き場のない19歳の女性(行きつけのJKリフレの嬢)を拾い、同居生活を始める」


「ひげを剃る。そして女子高生を拾う。」(以下ひげひろ)フォロワーの作品だな、というのは読み始めて1番最初に感じたこと。


「ひげひろ」は「26歳のサラリーマン吉田が行き場のない女子高生を拾い、同居生活を始める」という話で、あらすじだけで言えば「ただ制服を着てるだけ」とほぼ同じだ。


ただ、読み進めていくうちにこの作品は「ひげひろ」フォロワーの枠に囚われてはいないなと思った。


自分が感じた「ただ制服を着てるだけ」独自の魅力は以下の2点。

「ひげひろ」と比較しながら書いていく。


①「主人公の造形」

どちらの作品も「なぜ赤の他人であるヒロインを助け、家に置いておくのか?」という問いが主人公に投げかけられる。


そりゃそうだ。

「ひげひろ」の場合は対象が未成年だから、普通なら逮捕される。


でも、そのハイリスクに対するリターンを主人公の吉田は求めない。

一言で言うと「正義マン」だから。


この動機に対する納得できなさが「ひげひろ」の賛否が分かれている主な理由だと思う。


個人的に最終巻で吉田が何故ヒロインを拾ったのか?の理由を言うシーンは個人的には嫌いではないが……


「ただ制服を着てるだけ」主人公の堂本もヒロイン・明莉と肉体関係を持たない。

明莉から迫っているのに頑なに抱こうとしない。


「ひげひろ」が「赤の他人」同士という関係性からいきなり同居生活が始まるのに対し、「ただ制服を着てるだけ」は「JKリフレの嬢と客」という関係性を経てから、同居生活が始まる。


そう。普通に考えれば、この2人が肉体関係を持たないのはありえない。

「ひげひろ」と違って、相手は19歳だからリスクはない。

また、体外的にも2人は付き合っていることになっている。

ハードルは限りなく低いのに、堂本は絶対に明莉を抱かない。


個人的にこの作品で良かった部分は、この「なぜ抱かないのか?」という問いに対する明確な回答があるところだ。


堂本は善良かもしれないが、善人ではない。


彼は明莉を抱かないが、彼なりのリターンを貰っている。

それは歪み切っているのに人間味に溢れていて……読み進める手と鳥肌が止まらなかった。


人によってこの理由に納得できるかできないかはあるかもしれない。

ただ少なくとも自分は納得できたので、このシリーズは完結まで追うと決めた。


②扱っているテーマの特異性

読了時に感じた感想は「これ、本当にライトノベルか?」である。

扱っているテーマがあまりにも重すぎるし、こちらに強烈に訴えかけてくる。


JKビジネス」をメインテーマとして扱うライトノベルなんて後にも先にもこれだけだろう。


イラストがなければ、一般文芸で出ていても違和感はない。


「ひげひろ」も「JKブランド」について描いていたが、「ただ制服を着てるだけ」はより生々しく、突き詰めてこのテーマを描いている。


どのような経緯でこの作品が生まれたのか、その過程がとても気になるところだ。


個人的には、こういう作品が「ライトノベル」として存在するのはすごくいいことだと思うし、ジャンルの懐の広さを表している作品だろう。



この先が本当に楽しみな作品である。